本研究の目的は,ヒトの視覚情報が大脳視覚野に至るまでの2つの伝達経路(M経路とP経路)について,(1) 両経路の機能評価を同時に短時間で行う他覚的方法を確立すること,(2) 両経路の応答に視覚的注意が与える影響を定量的に捉える他覚的方法を確立すること,の2点である. 本年度は,(1)の方法について,特にM/P経路の特徴を表す指標について検討した.昨年までの検討で,空間周波数の連続的変化に対して最も顕著に変化する波形に着目しながら,空間周波数一定(1.0c/d,6.0c/d)の場合について健常者対象の実測から検証した.その結果,2次バイナリ核関数のN100-P130とN90-P110が,それぞれM経路とP経路の指標となることを確認した.これらの結果より,40秒程度の正弦波縞を疑似ランダム系列に基づいて反転させる刺激を,空間周波数を連続的に変化させながら提示した際のVEPからM/P両経路の応答を分離抽出できることが明らかとなった. 目的(2)については刺激条件の確定のための予備調査として,複数の注意条件を設定したVEP測定を,健常者を対象として行った.しかし,条件によるVEP応答の個人差が大きく,注意の有無による差異を的確に捉える条件の確定には至らなかった.今後も検討を継続していく予定である.
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