研究概要 |
本研究では,ヒトの歩行運動における下肢の周期的なリズム運動と体幹の姿勢運動の筋シナジーに着目し,ヒトの自発歩行運動における下肢のリズム運動および体幹の姿勢運動をキャプチャシステムやフォースプレートなどを用いた運動学的・力学的なデータを基に機構学的・力学的構造を解明する.そして,安定なリミットサイクルを発現する全身自由度のヒト筋骨格系の周期運動モデルを構築する.また,ヒトの筋活動計測データ,特に体幹の筋活動データと下肢の筋緊張に関する生理データを収集し,構築した周期運動モデルの上で筋骨格系の物理パラメータである筋剛性可変制御の役割や受動性についての数理的構造解明を目指すことを目的としている 本年度は,環境に応じて自律的に運動パターンが発現する力学的および情報論的メカニズムを明らかにする計画を立て,次の手順で研究を行なった 1. トレッドミル,モーションキャプチャシステムを用いてヒトの体幹の姿勢運動および下肢のリズム運動を計測し,特異値分解法を用いてヒトの歩行運動における全身の運動モード解析を行った その結果,ヒトの歩行運動では,健常者に共通な3~5個の主要モードが存在し,殆ど個人差のない普遍的で支配的なモードと,個人の癖や運動機能障害などの要因を含む幾つかの特殊な残余モードが存在することが明らかとなった 2. 残余モードに含まれる運動機能障害などの特異性を検出するため,予め計測した障害モードとの間のモード相関を定義し,障害の発現度,障害の種類などの予測手法について検討した 3. モード解析により導出した機構モデルを用いて,今後は数値シミュレーションにより,運動パターンの安定解析や制御ダイナミクスの抽出を行なっていく予定である
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