研究概要 |
1.ラット脳内への定量的なAβ(アミロイドβ-タンパク)注入法の確立 昨年度までの検討で、脳内に投与したヒトAβペプチドが、ヒトAβ特異的ELISAにて、ラットAβに影響されず検出可能であることが明らかとなった。今年度はラット脳内に定量的にAβを注入するための器具を以下の様に作製した。 脳内へのAβ溶液投与量は10μlとごく微量となるため、穿刺針に24Gの注射針をカットダウンした針を用いて加工し、ラット後頭部への穿刺時に脳を傷付けないように、穿刺針先端より5mm上方に内径50μmのポリエチレン製チューブを接着・固定した。これを液体クロマトグラフィー用マイクロシリンジ・注入針と接続して専用穿刺針とした。 この穿刺針を装着した空のマイクロシリンジを用いて、麻酔下にて(大槽内)へ穿刺した後吸引し髄液の流入を認めた後、Aβ溶液を充填したマイクロシリンジに付け替えることにより、正確な容量のAβ注入法が確立できた。 2.ラット脳から血液中への、Aβの移行の確認 4,40,400,500ng/lの各濃度のヒトAβ_<1-42>・PBS溶液10μlをラット脳(大槽内)に注入後、15,30,60分後に尾静脈より採血を行い、ヒトAβ特異的ELISAにより血中Aβ_<1-42>濃度を測定した。結果は4ng/mlのAβ溶液では血中への移行が確認されず40ng/ml・PBS溶液で検出されたものの、最大で3.8pg/ml(注入後30分値)と低かった。それに対して400ng/ml・PBS溶液で(82.7pg/ml・Plasma)、500ng/ml・PBS溶液で(185.5pg/ml・Plasma)と濃度依存性に脳内投与したAβの血中への移行が確認された。この実験結果より血中に移行してきたAβに対して体外循環を施行し短時間に急速除去して、脳から血中への、Aβ・濃度平衡を促進させる実験に適する濃度として400ng/ml程度が必要であることが考察された。
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