研究概要 |
高度な医療・福祉機器は人類に大いに貢献しているが、その経済的負担は大きい。研究代表者は、医療・福祉に応用できる、簡便で安全な、電気・磁気による生体計測技術の開発を進めていて、健康管理のためのモニター装置などとしての実用化を目指している。 開発中の計測技術では、生体内の情報(誘電率分布等)が受信側プローブ側の信号強度の変化分として現れるが、この変化が小さいと二次元画像化等の処理のために十分な精度が得られない。これまでの実験装置は汎用の測定器(スペクトルアナライザー)が中心の構成のため、信号変化が数値シミュレーションとの比較では十分得られず、ノイズの影響も大きかった。また、測定プローブの間隔は20~30cmとしてきたが,人の胴体の横断面を測る場合には,50cm程の間隔が必要である。信号強度は距離の2乗に反比例して大きく低下するため間隔を広げると、条件はいっそう厳しくなる。 測定精度と安定性の改善を図るため、デジタル式受信機(Software Defined Radio=SDR)を導入した。高速A/Dコンバータでデジタル化した信号をソフトウェアで構成した受信機で処理するため、用途に合った特殊な構成の受信機・測定器を柔軟かつ経済的に構成できる。通信の研究ばかりでなく、生体医用工学でも利用されはじめている。 SDRで構成した装置で測定を行ったところ、従来よりもノイズの少ない安定した信号が得られた。また、生体と誘電率が同等である水を満たしたファントムの測定を行ったところ、信号の変化が大きくなり、シミュレーションで得られる変の割合と一致するようになった。これは、SDRの導入に合わせて、送信側の発振器を独立した装置にしたことにより不要な入出力の結合が減ったためと考えられる。さらに改良を進めて、実際に人を測定して二次元画像を描画するのに十分な精度を得たい。
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