微弱な高周波電界を用いることで、生体内の誘電率分布を測定し、体内の水分量(血液、体液、膀胱内尿量)や脂肪、空隙の分布を求め、内臓脂肪、皮下脂肪、膀胱内尿量、肺機能を計測する技術の開発を行っている。 実験装置の主要な機能である生体内の組成により強度が変化した高周波信号の測定を、これまでは計測装置であるスペクトルアナライザーで行ってきたが、汎用の測定装置であるため、測定の条件や得られる精度等に制約があった。そこで信号処理の大部分をソフトウェアで行うことのできるソフトウェア受信機(SDR)を導入して、計測に適した測定と信号処理を行うように改良を行った。これによって、測定の精度と安定度が大きく改善され、測定の繰り返し回数を大幅に減らすことができた(従来10から20回のところが、1往復=2回程度)。人体の測定で、16方位からスキャンを行う場合でも、全計測に要する時間が30分程度となり、実験者自身を被検体とした試験的な計測を行うことができた。得られたデータは、予備実験の結果から想定されていたように、誘電率による信号強度の増加分と、電界遮蔽効果による信号強度の減少分が合成されたもので、そのデータから、研究の目的の一つである、生体内の誘電率分布を求めるには至らなかった。 また、アンテナ系の改善を行うために、ベクトルネットワークアナライザーを導入して計測を始め、プローブの送受信特性の改良に着手した。 この経緯を踏まえ、最終年度となる次年度では、測定信号の位相情報から、誘電率による信号強度の増加分と、電界遮蔽効果による信号強度の減少分を分離できないか、実験的に検討し、測定装置の改善を行っていく。
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