研究課題/領域番号 |
22500422
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研究機関 | 富山県工業技術センター |
研究代表者 |
大永 崇 富山県工業技術センター, 中央研究所, 副主幹研究員 (10416133)
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キーワード | 腫瘍細胞 / マイクロチップ / 癌細胞株 / 細胞捕捉率 |
研究概要 |
平成22年度に開発した血中の浮遊腫瘍細胞を捕捉できるマイクロチップの課題である、全血を流した際の詰まり発生を、遠心分離した全血の単核球比重成分(腫瘍細胞が存在)をサンプルとすることで解消した(別途、全血を流す場合には新たなフィルタチップを開発することでも詰まりを解消できた)。 チップの細胞捕捉性能を定量的に評価するため、癌細胞株を使用した細胞捕捉率の計測方法を確立した。細胞株懸濁液の濃度が異なる以下の2つのケースで計測方法を検討した。(1)高濃度(数万~数十万個/ml)の場合:顕微鏡視野のビデオ映像からそこに流入する細胞数と流出する細胞数を求めた。これらの数値から視野領域の捕捉率を求め、さらにチップ全体の捕捉率を計算して求める方法を確立した。(2)低濃度(数十~数百個/ml)の場合:チップ全体の流入細胞数と捕捉細胞数から捕捉率を求めた。蛍光標識細胞を使用し、流入細胞数はチップ入口のビデオ映像でカウントして求め、捕捉細胞数はチップ全体のイメージを作成してカウントした。 方法1により、表面が異なるチップの細胞捕撫率を求めた。細胞捕捉分子である抗体が表面に(a)2次元的に存在する場合と(b)3次元的に存在する場合(グラフトポリマーを介して表面に結合)について複数回捕捉率を求めたところ、(a)では何れもほぼ100%であったのに対し、(b)では0~98%と安定しなかった(媒体はPBS)。(a)の場合について、方法2で患者さんサンプルに近い濃度で捕捉率を求めたところ、95%(媒体はPBS)および85%(媒体は上記血液分画成分)となり、方法1による結果とほぼ一致すること、および本研究のチップが十分に高い腫瘍細胞捕捉能を有することを確認した。 以上をもとに(a)の表面のチップを使用して、富山大医学部にて患者さんサンプルを使用した捕捉試験を開始し、捕捉された細胞を病理学的に同定する方法を検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
検討に必要なチップシステムや捕捉結果を定量化する手法を確立し、チップ表面特性の検討から高い腫瘍細胞捕捉能を有するマイクロチップを開発した。さらにそのチップを用いて、臨床現場において患者さんのサンプルを使用した捕捉試験を開始しており、このようなマイクロチップの実現にかなり近づきつつある。
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今後の研究の推進方策 |
チップ表面特性面からの細胞捕捉性能向上については、系統的なデータを取ったり新たな表面を取り入れたりする部分に課題が残されているので、臨床テストと並行しながら検討する。
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