研究目的: 放射光による放射線治療研究での照射野照合において、着目部位の辺縁部分が輪郭強調された画像を得ることができる屈折コントラストイメージングを使い、非常に鮮明な照射野確認画像を撮影し高精度な治療を可能とする。 平成24年度の成果: マイクロビーム放射線治療での治療研究自体において、平成24年度では照射野を横20mm×縦20mmから横50mm×縦50mmへ拡大し、ウサギやミニ豚などの中型動物での実験を実施する予定であった。しかし、平成23年度までの治療研究は、マイクロビームX線の線量やマイクロビームの間隔について議論されてきたのみであり、実用化にはラット・マウスを使った多くの実験がさらに必要であった。このため、平成24年度は中型動物での実験への対応を検討すると共に、ラット・マウスでのさらに精密な治療効果の実験を実施した。実験項目は、細胞株の放射線感受性と治療効果の関係、正常組織耐容線量の評価、腫瘍周囲血流の違いが抗腫瘍効果に及ぼす影響、照射が浮腫状態・低酸素状態の脳に与える影響、放射線耐性癌に対する格子状ビーム照射による新たな治療、照射に対する晩期有害事象の検討、正常組織耐容線量から見た最適線量の検討などであり、平成23年度に開発した照射中画像撮影装置を有効に使い非常に多くの実験データを得ることができた。 さらに、屈折コントラストイメージングの手法自体について、従来の低エネルギーX線を使った場合はラット・マウスの体毛のコントラストが強すぎるため、体毛のない系統を使用するか、動物の体を液体中に浸して体毛の影響を抑制するなどの必要があった。しかし、高エネルギー白色X線を使う本手法ならば、X線エネルギーが高いため体毛のコントラストが低く、体毛のあるラット・マウスをそのまま実験に使えるという大きな効果があることが見出された。
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