研究課題
本年度は研究計画に従って、以下の研究成果を得た。1.ES細胞の心筋細胞への分化誘導に関して、マウスES細胞の未分化状態のマーカーであるSSEA-1を発現している細胞(SSEA-1+)と分化誘導され発現していない細胞(SSEA-1-)を分離・培養したところ、SSEA-1+の分化割合がSSEA-1-よりも高い値を示した。この結果について、分化過程を示す特異マーカーであるBryT、Mesp1、Islet1、Nkx2.5、Hand2、および心筋細胞への分化促進因子であるp300、SRFのmRNA発現量をRT-Real Time PCR法を用いて比較・検討した。 その結果、分化促進因子p300、SRFの特定時期の高い発現がES細胞の心筋細胞への高効率な分化誘導に重要であることを示唆した。2.心室モデルの構築に関しては、組織構築の足場素材としての豚羊膜の部位・方向性を考慮しその粘弾性と強度特性を引張実験で詳細に検討した。その結果豚羊膜の等方性と部位による異質性を判明した。この結果はES細胞の心筋細胞への分化・成熟における足場素材の力学特性の及ぼす影響についてより定量的な検討・評価ができ、組織構築の基礎構造である心筋単層の機能最適化の重要影響要素を定量的に特定した。3.心室モデルを培養する積層灌流培養バイオリアクタの開発では、前年度の結果を踏まえ、灌流装置を更に小型化し、インキュベータ内の培養とインキュベータ外の培養状況の観察を無菌状態で行うことが実現した。また、積層間の細胞・足場融合部分の適切な圧力の印加方法と強度を検討した。このような積層灌流培養バイオリアクタはこれまで報告されていない革新的な培養装置であり、これによって3次元的な機能組織の構築が期待できる。本年度の目標は概に達成したが、計画した動物移植実験には実験経費と研究期間の原因で行えなかった。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Metabolism
巻: 61 ページ: 92-98
10.1016/j.metabol.2011.05.012
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