研究課題/領域番号 |
22500426
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
加藤 基伸 鳥取大学, 医学部, 助教 (00273904)
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研究分担者 |
井上 敏昭 鳥取大学, 医学部, 准教授 (80305573)
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キーワード | 微小核細胞 / 細胞融合 / 染色体導入 / 麻疹ウイルス / エンベロープタンパク質 / CD46 / 一本鎖抗体 |
研究概要 |
動物細胞を対象とした「ミクロセル融合法」は、染色体を供与細胞から受容細胞に移すことを可能にした。これまで、ヒト染色体をマウスES細胞に移入する系がゲノム/エピゲノム研究に大きく貢献したのに対し、正常ヒト細胞への染色体移入はきわめて困難であって、懸案のまま残されている。染色体をiPSなど幹細胞に移入できれば、ヒトの再生/遺伝子医療をはじめ発生、分化、疾患研究に新たな方法論を提供できる。本研究は、ミクロセル融合法の素過程を改良し、受容細胞に対する指向性を持ち効率の高い「染色体を単位としたゲノム輸送システム」確立を目指す。前年度までに、ミクロセル融合法の効率改善に対し、麻疹ウイルスエンベロープ由来の細胞膜融合タンパク質の利用が有効であることを明らかにした。これを受けて今年度は、ウイルスエンベロープタンパク質の改変により反応指向性が操作できるかを検討した。 麻疹ウイルス(弱毒化Edmonstonワクチン株)由来のヘマグルチニン(H)タンパク質は、補体不活化因子であるCD46を特異的に認識して吸着する。CD46はヒト組織において広く発現するものの、発現量は低レベルである。実際ヒト正常線維芽細胞に対しHタンパク質を介したミクロセル融合を試みたところ、従来法であるポリエチレングリコールを用いた融合法と同程度の融合効率に止まった。そこで線維芽細胞で比較的発現量の高い表面受容体を検索し、候補としてCD13およびCD71を選定し、これらに対する一本鎖抗体を入手した。Hタンパク質のC末端細胞外ドメインに一本鎖抗体を付加した発現プラスミドとフュージョン(F)タンパク質発現プラスミドを、ヒト染色体ベクター供与細胞(CHO)に共導入したところ、該CHO細胞はCD13ないしCD71を発現するヒト細胞に対する融合能を獲得した。該CHO細胞よりミクロセルを調整しヒト受容細胞と共培養したところ、ヒト染色体ベクターは受容細胞に移入された。移入効率は従来法と比較して1桁以上向上したことから、一本鎖抗体の利用により受容体に対する反応指向性が操作できることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初計画では、1)ミクロセルの分取と2)細胞融合法の検討を提案した。2)については成果が出つつあるが、1)については染色体ベクターの標識法に関する予備実験に留まっている。
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今後の研究の推進方策 |
上述2項目のうち、先行している2)細胞融合法の検討については引き続き推進し成果をまとめる。検討が遅れている1)ミクロセルの分取については、当初計画で提案した染色体ベクターの標識法に関するいくつかのアプローチのうち、実現可能性の高いものを見極めることに注力する。
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