研究課題/領域番号 |
22500429
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研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
高島 由季 東京薬科大学, 薬学部, 准教授 (70236214)
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キーワード | 核酸デリバリー / リポソーム / 網膜色素上皮細胞 |
研究概要 |
はじめに、凍結乾燥リボソーム再水和時に核酸溶液を加えて核酸を内封することを目的として、凍結保護剤として機能するピアルロン酸を修飾したDOTAP/DOPEリボソームを調製し、凍結乾燥前後の物性を評価した。リボソームは粒子径約100nmを示したものの再水和後は約3倍の粒子径増大を示し、凝集あるいは多層リボソームとなることが確認された。また、核酸封入率は極めて低く調製段階での核酸のロスが大きく製造効率が低いことが判った。これを踏まえ、核酸を内封する調製法を界面活性剤除去法に変更し検討を行った。脂質(DOPE/CHEMS/DSPE-PEG)の薄膜に界面活性剤溶液を添加して得た混合ミセル溶液に核酸と塩基性高分子(ポリエチレンイミン)の複合体を滴下後、界面活性剤を除去し核酸封入リボソームを調製した。得られたリボソームは粒子径100~150nm、70-100%の核酸内封率を示した。また、スクロースを凍結保護剤とした乾燥前後の粒子径および封入率に変化はなく1ヶ月以上安定であることを確認した。 さらに、網膜指向性を付与するため、網膜色素上皮細胞に発現するトランスフェリン(Trf)受容体に着目した。リボソーム表面へのTrf修飾を試み、ヒト網膜色素上皮細胞(ARPE-19)における取込み挙動および遺伝子発現性、ラットへの点眼投与による眼内挙動を評価した。その結果、本リボソームがTrf受容体を介してARPE-19に取り込まれること、血清存在下でも高い遺伝子発現性を示すこと、ラット眼組織切片において網膜近傍に選択的に滞留することが確認され、Trfをリガンドとした網膜指向性付与の可能性を示唆した。 また、将来的に光応答性リボソームを設計する基礎検討として、まずは温度感受性リボソームの処方を検討した。DOPE/CHEMSに温度感受性脂質DPPCとリゾ脂質(MSPC)を添加したリボソームを調製し、温度による内封物の放出性を評価した。その結果、一般的に安定性が低いことで知られるDPPC含有リボソームの安定性を高め、相転移温度以上の温度ではMSPC添加リボソームにおいてのみ放出される可能性を示した。今後さらに処方を確立すべく検討を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
核酸を高効率で内封し、血中滞留性を向上し網膜への指向性を付与したリボソーム調製の可能性は示しているが、光応答性を示し得る処方設定および調製法の検討が未だ基礎検討の段階である。
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今後の研究の推進方策 |
今後、投与経路による後眼部への指向性(体内動態)をラットで評価する。また、当初、凍結保護作用および血中滞留性向上機能を有するビアルロン酸を修飾したリボソームとする予定であったが、最終的な後眼部への核酸送達を確実にするためには前眼組織などにも発現するヒアルロン酸受容体への結合を回避し、より指向性を付与する必要性があり、このため他のリガンドあるいは脂質を用いた処方検討も積極的に進めていく。さらに、血管新生因子を阻害するsiRNAによる疾患モデル動物での治療効果の評価法についても検討を進める。
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