研究課題/領域番号 |
22500431
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
北嶋 隆 独立行政法人理化学研究所, 伊藤ナノ医工学研究室, 協力研究員 (40399556)
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キーワード | 増殖因子 / 蛋白質固定化 / 幹細胞 / 分化誘導 / 培養基材 / ES細胞 / マトリックス |
研究概要 |
今年度は(1)固定化用基材としての修飾型マトリックス物質の有効性検証と、(2)シグナル因子の固定化手法の確立および培地条件の検討を進めた。 (1)固定化基材:光反応性ヒトゼラチンをUV照射で固定化した培養器において、間葉系幹細胞の増殖が促進されることを見いだした。また、同様に光反応性基を導入したヒアルロン酸(高分子および低分子タイプ)を作成し、それらを固定化した培養器のES細胞増殖への効果を検証した。低分子型が、未分化状態での増殖に有効であること、さらには血管内皮細胞への分化誘導において、その効率が高まることを見いだした(シグナル因子は固定化ではなく、培地に添加)。修飾型マトリックス物質が幹細胞培養に有効である可能性を示した。 (2)シグナル因子の固定化:因子類は光反応性ゼラチンと混合することで容器上に固定化が出来る。多数の因子固定化スポットを作るための装置を作製した。これによってウェル内に、複数種の因子を、異なる用量、また異なる種類を組み合わせて固定化が可能となった。異なる環境区画が同一容器内に作れるため、多数の条件を比較しやすい。また固定化区画のサイズや相互の位置関係を変えることも可能で、今後の解析に必要な種々条件をつくれるものと考える。 ES細胞は、専用の培地では盛んに増殖したあと2週間程度で死滅したが、アクチビンと増殖因子(FGF,VEGFなど)をあわせて固定化したウェルでは、基礎培地でも長期生存する細胞が出現。基礎培地は低血清濃度で、増殖因子等を添加していないため、固定化された因子が効果を示したものと推定される。また細胞は、リング状の形態をとるものが多くみられ、内皮細胞の管状構造を模倣している可能性もあると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
基材となるマトリックス物質の固定化条件の検討はほぼ終了。シグナル因子類を多数種、異なる条件で固定化配置する手法が確立でき、培養液等の条件もほぼ絞り込めた。このため、今後は、ES細胞への効果の検証を集中的に行える段階に達している。
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今後の研究の推進方策 |
最終の目標は、固定化して有効な因子の条件(種類と濃度、組み合わせおよび配置)を明らかにすること。問題としては、検討条件が多く画像データの解析に時間がかかる点。今期の予備結果から考えて、ES細胞から内皮細胞への分化誘導条件について集中して検討する方針である。他の細胞への分化誘導、あるいは未分化状態でのES細胞(可能ならばiPS細胞も)増殖への効果検討も念頭に置くが、共同研究として、外部の協力を頂くことも考えている。
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