研究課題/領域番号 |
22500439
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
水野 麗子 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (80398437)
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研究分担者 |
藤本 眞一 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (70209097)
神野 正敏 奈良県立医科大学, 医学部, 准教授 (30195185)
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キーワード | 超音波医科学 / 心毒性 / p53 / mTOR / アントラサイクリン |
研究概要 |
本研究は、臨床現場で広く使用されている抗腫瘍薬のアントラサイクリンが、その副作用である心毒性のために高い抗腫瘍効果が期待出来るにも関わらず、余儀なく使用を制限されている現状に端を発したものである。本研究の目的は、アントラサイクリンにより誘発される心毒性の制御システムを確立することにある。超音波を用いて心筋選択的にp53機能を制御することにより、1)心筋のアポトーシスを抑制、2)p53制御を介して心筋保護作用を有するmTOR機能の不活化を阻止、以上の2つの経路によってアントラサイクリン誘発性心毒性の発現を抑制する手法を確立する。アントラサイクリンが心毒性を有することは古くからよく知られているが、心毒性発症に関する詳細な病態生理学的メカニズムについては解明されていない点が多い。われわれは、in vivoでの検討で、アントラサイクリン誘発性心毒性においては、受動的心筋スティッフネスの増加のみで明らかな心機能低下のみられない潜在的心機能障害の検出がまずは重要であり、その段階で心毒性抑制に留意すれば、顕性な心機能低下への移行を阻止し得ることを明らかにした。また、in vitroの検討でp53機能制御物質であるpifithrin-alphaを封入したマイクロバブルが、最も効率的にキャビテーションを起こし、心筋細胞内へpifithrin-alphaがデリバリーされるための超音波の至適照射条件を超音波強度0.5、1.0、2.5W/cm^2、超音波周波数0.5、1.0、2.0 1MHzのそれぞれの組み合わせの中から決定した。しかし、マウス個体を用いた検討では、in vitroで決定された至適照射条件下では、キャビテーションが最も効率良く起こる一方、心筋細胞が高率に死滅することが確認されたため、再度、超音波強度および周波数の設定を変えてキャビテーション効率と安全面の両者が最も高い至適条件についてさらに検討を重ねた。以上、当該年度に得られた研究結果は、アントラサイクリン心毒性の制御システム確立の上で、基礎となる研究であり、重要な意義を有する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
超音波の至適照射条件に関する検討において、in vitroでの実験結果から得られた条件設定が、マウス個体レベルの実験では、キャビテーションが効率良く起こる一方で心筋細胞が高率に死滅したため、条件設定に関する検討を重ねて行わなければならず、研究の進捗がやや遅れることとなった。
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今後の研究の推進方策 |
実験補助員を増やし、超音波照射の複数の設定条件下での検討を同時に並行して行えるようにし、研究遂行のスピードアップを図る。また、摘出された心筋組織の固定、染色には、病理標本処理専用の実験補助員に協力を求め、適切な状態で摘出後の検討が行えるようにする。
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