平成24年度の研究としては、平成23年度までの研究で問題となっていたアルゴリズムの改良を行った。平成23年度までは、計算時間の短縮のために眼球中の瞳孔の形状を円形で仮定して瞳孔検出を行い、その後の動作解析を行っていた。しかし、実際の瞳孔形状はやや楕円形となっている場合があり、また視線方向が左右の両端に近い場合には、瞳孔形状がかなり縦長の楕円形になる。このような場合には瞳孔位置の検出が難しく、眼振のデータに大きな誤差が含まれた。平成24年度は、瞳孔の形状を楕円形で仮定し、かつこれまでの円形近時よりも計算時間を短縮するアルゴリズムを開発した。それによって、今まで以上に眼振の解析が容易になった。 平成24年度のもうひとつの研究内容として、平成23年度に作成したゴーグルカメラによる臨床実験がある。ハードウェアの作成には予想以上に時間がかかってしまったため、作製したゴーグルカメラの問題点の洗い出しが平成24年度の急務となった。医師の協力により、ゴーグルカメラで患者の眼振を撮影し、診断における問題点をチェックした。その結果、三つの欠点が見つかった。そのうちの二つは、ソフトウェアのバグなどの問題なので、改良していくことが可能である。しかし、大きな問題として、ゴーグルカメラの構造的な問題があった。ゴーグルカメラの作製のしやすさやメンテナンスを考慮して、CCDカメラを目の正面に設置したのだが、人間の目の機能として正面に物体があると、その物体を凝視してしまうため、めまい患者であっても眼振が起きにくくなるという欠点があった。臨床で利用するためには、ゴーグルカメラを再設計する必要がある。 今後に残された問題として、開発したアルゴリズムに、ゴーグルカメラが大きく揺れたときのぶれ補正のアルゴリズムを加えることと、新設計のゴーグルカメラを作製することがあげられる。
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