研究概要 |
本年度は、超音波単独、または薬物との併用による抗腫瘍効果を、in vitro腫瘍細胞を用いて確認した。超音波と併用することにより殺細胞効果が発現、または増強されるナノ粒子をスクリーニングした結果、フラーレン、水酸化フラーレン及びトリスフラーレンで優れた増強効果を認めた。超音波の作用には物理作用と、キャビテーションを介して発生する活性酸素種による化学作用とがあると推定されるため、活性酸素種消去剤添加の殺細胞作用に対する影響を検討した。OHラジカルの消去剤であるマンにトールとスパーオキサイドラジカルの消去剤であるSODの添加は併用による殺細胞効果に対し有意な抑制作用を示さなかったのに対し、一重項酸素の消去剤であるヒスチジンの添加が、超音波とフラーレン、または水酸化フラーレン併用処置の殺細胞効果を著しく抑制することを認め、殺細胞作用機序における一重項酸素の関与を確認した。超音波照射による水溶液中での活性酸素生成をラジカル生成を指標として電子スピン共鳴(ESR)により測定した。活性酸素に特異的なスピントラップ剤による生成量の測定と消去剤による阻害効果により一重項酸素の関与を推定した。また、これらのナノ粒子と併用が可能なポルフィリン誘導体(mono-l-aspartyl chlorin e6, Npe6とzinc phthaloctanine tetrasulfate, ZnPcTS)の音響化学活性を調べ、Npe6とZnPcTSが超音波によって音響化学的に抗腫瘍活性化することを確認した。次年度以降は、超音波を照射によりナノ微粒子の活性化によって音響化学的抗腫瘍効果を発揮させ腫瘍の治療を行う予定である。
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