本研究課題は,不活動に伴い慢性的に生じる疼痛について,病態の解明を行うとともに,物理的刺激と機械的刺激を組み合わせた新しい治療介入を行い,その影響と作用機序を明らかにすることである。過去2年間の本研究で、不活動に由来する疼痛の発生機序は病期に応じて異なる可能性があることと,ギプス除去後の回復過程においては筋傷害により疼痛の回復が遅延されている知見を得た。そこで平成24年度は以下の研究を行った。【目的】①ギプス固定そのものに由来する疼痛の発生機序の解明,②ギプス固定期間中および2週間のギプス固定除去後におけるストレッチングの効果を明らかにすること。【方法】1.ギプス固定はWistar 系雄性ラットを用い、両側足関節を最大底屈位の状態でギプス包帯を用いて長期間不動固定することで作製した。2.ストレッチングは他動運動装置を用い、4秒に1回のサイクル(角速度 20°/秒)で足関節底背屈運動を行い,腓腹筋を周期的にストレッチした。3.痛みに対する行動反応の評価はRandall-Selitto testとvon Frey hair testで検討した。4.分子生物学的検索は、第4~6腰髄の後根神経節および脊髄後角を検索材料とし,Real-time PCR 法により相対的 mRNA 発現を比較検討した。5.組織病理学的検索は、右側の腓腹筋を検索材料としてヘマトキシリン・エオジン染色を行った。【結果および考察】ギプス固定による疼痛は,脊髄後角における BDNF 発現量の増加が関連している可能性が窺われた。また,ギプス固定による骨格筋の疼痛は,不動期間中からストレッチングを行うことや,ギプスを早期に除去することにより軽減されることが推察された。さらに,ギプス固定除去後の疼痛および筋線維損傷に対するストレッチングの影響は,ギプス固定期間により異なることが示唆された。
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