研究課題/領域番号 |
22500458
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研究機関 | 神戸学院大学 |
研究代表者 |
杉元 雅晴 神戸学院大学, 総合リハビリテーション学部, 教授 (20379457)
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研究分担者 |
寺師 浩人 神戸大学, 医学部附属病院, 教授 (80217421)
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キーワード | 物理療法 / 電気刺激療法 / 直流微弱電流刺激 / 褥瘡 |
研究概要 |
平成22年度に完成させた直流微弱電流刺激装置(小型褥瘡専用治療器)と同様の電気刺激条件に設定できる電気刺激治療器(厚労省認定医療機器)を使用して、倫理委員会承認のもとで、褥瘡患者の創部への治療を開始した。まず、褥瘡部の電界状況をデジタルマルチメータで簡易測定し、計算により損傷電流が約10~20μAであることを確認した。そこで、通電電流値は、損傷電流と合わせて最適電流値100μA(in vitro)なるよう電流強度を設定した。標準治療に加えて直流微弱電流刺激(創部;陰極、近接健常皮膚部分;陽極、周波数;2Hz、パルス幅;250ms、刺激強度;80μA、通電時間;40分)を行うことで、褥瘡治癒期間の短縮に貢献できることが確認できた。さらに、褥瘡治癒が停滞した7症例を追加して検討加えたところ、創の週治癒率が平均29.4%になり、治癒が促進した。この時に、褥瘡部に貼付したハイドロコロイドドレッシング材の滲出液で湿潤状態にある箇所(高い通電率)に、我々が開発した針金状の塩化銀電極(関電極)を挿入し、褥瘡から近接の健常皮膚部分に陽極(不関電極)を貼付した。 尚、電気刺激療法を実施する時の体位(ポジショニング)に関する研究を行い、30°~40°側臥位で股関節内旋位の保持により股関節大転子部の褥瘡予防ができ、快適肢位であることを確認した。 このような結果から、褥瘡部を陰極とした直流微弱電流刺激療法は創の縮小効果があると推測され、小型褥瘡専用治療器(未承認医療機器)の安全性および効能を確認する臨床治験研究を申請する基礎資料が完了した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
我々が確認した極性と最適電流強度で臨床研究を実施することができ、直流微弱電流刺激の治療効果が高かったことが確認できた。褥瘡治療は局所治療だけでなく、ポジショニングや栄養管理などの因子も多く関与しているが、介入治療の2週間前から治癒までの期間に、血液検査データの変化もなく、褥瘡局所管理にも変更がなかったことから、創の縮小効果には、直流微弱電流刺激療法が奏功したと考えられる。褥瘡部位を陰極とした低強度電流刺激は褥瘡の創の縮小に十分な効果があったので、未承認医療機器による臨床治療研究申請への基礎資料となる。平成24年度への課題研究を推進する準備ができたと考える。。
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今後の研究の推進方策 |
今回の結果を踏まえ、我々が開発した小型褥瘡治療専用器(未承認医療機器)の安全性および効能を確認する臨床治験研究を申請し、クロスオーバー、ランダム化比較試験を行う必要がある。 また、平成22年度からヒト培養線維芽細胞の電気走性の最適条件に関する研究を行ってきたが、50μAと100μAの比較にとどまった。そこで、平成24年度には、300μAまでの電流刺激を用いて、最適電流値を再確認する必要がある。
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