ラットの骨格筋に挫滅損傷を与えた後、アイスパックを用いて損傷筋に冷却刺激を与えた。寒冷により、損傷直後から始まる二次損傷は遅延し、それに伴ってマクロファージの遊走が1~1.5日遅れた。マクロファージは筋の再生を促す様々な因子を分泌することから、In situ hybrydizationによって、TGF-β1とインスリン様成長因子がマクロファージににって分泌されることを確認した後、これらの因子を免疫組織化学的に観察したところ、これらの因子の発現も1~1.5日遅れ、しかもTGF-β1の発現は1~2日遷延していることが明らかになった。損傷14日後では再生筋の成熟が対象群に比べて遅れており、また損傷28日後では再生筋の直径が有意に細くなっていた。また、膠原線維の増加による線維化も起こっていた。 これらの結果は、臨床的に広く行われている損傷筋に対する冷却は、筋の再生の上から見て問題があり、再検討が必要であることを示唆している。 現在、挫滅損傷後に42度の温熱刺激を加えて同様の観察を行っているが、これまでの結果では筋の再生は対象群に比べて進んでいるようである。これらの結果に基づいて、上記成長因子等に加え、ヒートショックプロテインの発現やその経時的変化を免疫組織化学的に観察している。
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