研究課題/領域番号 |
22500461
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
川真田 聖一 広島大学, 大学院・保健学研究科, 教授 (30127641)
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研究分担者 |
黒瀬 智之 広島大学, 大学院・保健学研究科, 助教 (20363054)
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キーワード | 縟瘡 / 圧迫 / 磁石 / 床ずれ / ラット / 虚血 / 皮膚 |
研究概要 |
褥瘡の病態を解明し、予防法と治療法を開発するため、平成22年度に次のような褥瘡の動物実験モデルを確立した。ラットの腹膜腔に金メッキしたネオジム磁石(25×20×2mm)を挿入して縫合し、術後3、4日から上腹部の皮膚に別の磁石(25×20×5mm)を当て、1日1回4時間100mmHg(13.3kPa)の圧力で圧迫操作を連続5日繰り返すと、上皮欠損、皮膚の変色、壊死、潰瘍など、褥瘡のさまざまな症状を高率に起こすことができた。この実験系を使い、圧力の影響を調べた。1日1回4時間で5日圧迫の条件は変更せず、圧力を100から70、60、50mmHgに下げると、圧力が低いほど症状は軽かったが、60mmHgでも多くのラットで傷害が生じた。しかし、50mmHgでは、ほとんどのラットで肉眼的、顕微鏡的に異常は認められなかった。 60mmHg以上では傷害が起こり、50mmHgでは傷害がほとんど起こらない理由を追究するため、腹壁を10、20、30、50、60、100mmHgの圧力で圧迫しながら内皮結合タンパクを心臓に注射し、注射後数分間だけ血液を循環させて腹壁を採取した。全血管のうち、その数分間に血液が流れた毛細血管の割合を調べると、0mmHgでは約77%、10mmHgで約40%、20mmHgで約15%、50mmHgで約20%、60mmHgで約7%、100mmHgで約14%の毛細血管に血流が観測された。したがって、50mmHgで傷害が著しく軽度であることは、血管の閉塞度の違いで説明することは困難であり、褥瘡の発症には血流以外の因子が関係している可能性が示唆された。 また、上記モデルの褥瘡発症過程を追究するのは、光学顕微鏡レベルでは倍率の点で限界があり、電子顕微鏡を使用して調べる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
金メッキした磁石の使用によって、期待した実験成果が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
褥瘡実験モデルと開通している血管の染色法が確立したので、これらの実験方法が普及する前になるだけ多くの実験を実施し、論文にまとめる。
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