【健常群】 健常者波形は、従来型および改良型非侵襲センシング装置のいずれにおいても、波形自体の相違は認められなかった。健常群の基本波形は、襲来型非侵襲センシング装置で得られた波形と非常に類似しており、縦並列をとることも一致していた。しかし、喉頭波形において二相性や多相性が出現し、さらに相の出現時間つまり喉頭運動時間が個人により異なることの原因について特定することは困難であった。 【VF検査により、誤嚥(+)と誤嚥(-)と診断された者】 VF検査により誤嚥の有無を診断された者に対して、改良型非侵襲センシング装置を使ってデータを収集・解析した。結果、健常群波形と比較して、摂食・嚥下障害の疑い群には3つの運動波形が縦並列をなさず、左右にずれて波形が出現する傾向が、特に(-)群よりも(+)群の方に多く見られた。さらに、トリガスプーンから3つの波形が出現するまでの潜時が(-)群より(+)群の方が延長する傾向が見られた。この結果は、準備期や口腔期にも障害が及んでいることが考えられる。また、(+)群の方は(-)群に比べて、呼吸障害(特に呼吸回数が多い頻呼吸)を示す者が多く、これらの者は嚥下性無呼吸の波形が不明瞭であった。さらにこれらの者はむせの出現や、3つの波形の縦並列をなしていなかった。このような結果は呼吸機能低下を中心とした全身耐久性の低さが、摂食・嚥下機能にも影響を及ぼしていると考えられる。
|