研究概要 |
COPDに対する呼吸リハビリテーションには,有酸素性運動,呼吸筋強化トレーニング(Respiratory Muscle Training, RMT),横隔膜呼吸練習,胸郭ストレッチがあり,特に運動療法を中心とした運動治療においては有酸素性運動とRMTが重要とされている。有酸素性運動はこれまで多くの基礎的・臨床的な研究により効果的なプログラムが考案されてきた。一方,RMTは運動強度のみから検討された報告のみであり,詳細なメカニズムは不明である。これまでRMTは呼吸筋(横隔膜・外肋間筋)を肥大させ,筋張力の増大にともなう呼吸状態の変化が惹起されることは報告されているが,筋形態変化以外の生体反応に及ぼす影響については十分に解明にされていない。 我々の先行研究(TOMITA K : Neurosci Lett.440(3):327-330,2008)をもとにした仮説では,RMTは筋を肥大させ,さらに延髄呼吸ニューロン群の動員領域を減少させる効率な神経活動の適応化が起こると考えている。本研究では,c-Fos免疫組織化学的・電気生理学的手法を用いて「呼吸筋強化トレーニング」が呼吸中枢制御機構に及ぼす可塑的変化を検証することを目的とした。 本年度は、呼吸負荷による神経系の変化を調べるために、成ラットに対して4~8週間の呼吸筋強化トレーニングをおこない、c-Fos免疫組織化学的手法を用いて、トレーニングが呼吸中枢に与える影響を調べた。その結果、トレーニングラットでは、延髄背側呼吸ニューロン群と腹側呼吸ニューロン群において、c-Fos免疫陽性ニューロン数に変化が見られた。これにより、呼吸筋トレーニングを行うと延髄呼吸中枢の呼吸ニューロンの活動が変化することが明らかになり呼吸負荷が有効であることが分かった。
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