研究概要 |
COPDに対する呼吸リハビリテーションには、有酸素性運動、呼吸筋強化トレーニング(Respiratory muscle training, RMT)、横隔膜呼吸練習、胸郭ストレッチがあり、特に運動療法を中心としたリハビリテーションにおいては有酸素性運動と呼吸筋強化トレーニングが重要とされている。有酸素性運動はこれまで多くの基礎的・臨床的な研究により効果的なプログラムが考案されている。一方、RMTは運動強度のみから検討された報告であり、詳細なメカニズムは不明である。これまでRMTは呼吸筋(横隔膜・外肋間筋)を肥大させ、筋張力の増大にともなう呼吸状態の変化が惹起されることは報告されているが、筋形態変化以外の生体反応に及ぼす影響については十分に明確にされていない。我々の仮説では、呼吸筋強化トレーニングは筋を肥大させ、さらに延髄呼吸ニューロン群の活動変化が生じると考えている。 本年度は、無麻酔・覚醒ラットに4週間のRMTを行い、RMT前後で、高二酸化炭素負荷に対する換気応答解析、延髄呼吸ニューロンにおけるc-Fos免疫組織化学的解析を行った。その結果、4週間のRMT後で、高二酸化炭素負荷に対する換気応答は維持したにも関わらず、その際の呼吸活動に参加した延髄呼吸ニューロンの数(c-Fos免疫組織化学反応ニューロン)が減少した。これらの研究成果から、呼吸筋強化トレーニングは呼吸筋を肥大させる効果以外に、延髄呼吸ニューロン群にも何らかの変化を及ぼしている可能性がある事が示唆された。
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