3次元動作解析装置を使った健常者の呼吸運動の大きさをもとに、呼吸運動評価スケールを作成した。呼吸運動評価スケールは、上部胸郭、下部胸郭、腹部における胸腹部の吸気運動を5段階に設定した。これは、吸気時の呼吸運動を減少「-1」、変化なし「0」、わずかな拡大「1」、明らかな拡大「2」、大いに拡大「3」の5段階で表したものであり、健常者における安静呼吸時の呼吸運動を「1」とし、参考値を示した。段階の判断は評価者が視診、触診を通して判断することとした。 作成した呼吸運動評価スケールの検者間および検者内信頼性を検証するために、呼吸障害者10名を対象に2名の理学療法士が呼吸運動評価スケールによる呼吸運動の評価を行った。2名の理学療法士が同時測定を行い、そのうち1名は1週間後に再測定を行った。信頼性の指標には重み付けカッパ係数を求めた。その結果、検者内信頼性および検者間信頼性ともにほとんどが中等度以下の値を示し、信頼性を保てないことがわかった。検者内信頼性は検者間信頼性より低値であったことから、呼吸運動の変動しやすさが影響した可能性がある。最終的に、検者間信頼性を保証できない要因として、視診・触診による主観的判断の影響が考えられ、胸腹部上の呼吸運動をより客観的に判断するための測定器具が必要であると考えられた。 そこで、胸腹部上の呼吸運動を測定するための簡易的なデバイスの開発を行った。作成した呼吸運動測定デバイスは、ペンサイズであり、先端を胸腹部上に当て呼吸運動に合わせて上下動する指標を目盛から読み取ることができるものである。これを利用することで、呼吸運動評価スケールの信頼性を高めることが可能と考える。
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