安静呼吸を5段階(-1~3)で評価する呼吸運動評価スケールをもとに、深呼吸を9段階(0~8)で評価する呼吸運動評価スケールを作成した。三次元動作解析装置で測定した健常者の呼吸運動データを基準として、5段階の呼吸運動評価スケールの「3」より大きなスケールとして深呼吸運動を5段階(4~8)に区分した。スケールの段階は、健常者の安静時呼吸運動の下限(10パーセンタイル)から深呼吸運動の大きさの下限(10パーセンタイル)を3段階(1~3)、深呼吸運動の下限から上限(10~90パーセンタイル)を4段階(4~8)に区分し、安静呼吸運動の下限以下(0)と深呼吸運動の上限以上(8)を加えた9段階とした。それに伴い、呼吸運動評価スケールを客観的に判断するために作成した呼吸運動測定器により健常者の深呼吸運動を推定可能かどうか検証した。その結果、上部胸郭、下部胸郭、腹部のそれぞれの測定部位において、得られた回帰式の決定係数は0.98~0.99を示した。このことにより呼吸運動測定器を用いることで胸腹部上の深呼吸運動を推定し、呼吸運動評価スケールの判定に活用できることがわかった。 加えて、呼吸障害者13名を対象に深呼吸の呼吸運動評価スケールを2名の評価者で測定し、検者間信頼性を検証した結果、カッパ係数0.75~0.85となり信頼性を保てることがわかった。また、対象となった呼吸障害者のスケール中央値は「2」と胸腹部可動性低下していることが示された。呼吸運動評価スケールにより、安静時の呼吸パターンだけでなく胸腹部可動性の客観的評価が臨床現場で可能となり、呼吸運動の的確な評価、情報共有、効果判定に活用できると考える。
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