本研究は、脳卒中急性期に早期に行われるリハビリテーションが、運動ネットワークの再構築を促進するために重要であることを証明するために計画された。感覚刺激、他動運動、運動イメージ、などのリハビリ手技が、運動療法と同様に、大脳の運動ネットワークの再構築を賦活し、片麻痺の回復を促進することを、functional MRIとトラクトグラフィーを用いて、機能と形態の両面から、脳卒中後の脳の動的な適応動態を明らかにするために計画された。脳卒中で入院した患者を選定し、手運動(hand movement)、手の感覚刺激(palm brushing)、手の他動運動(proprioceptive input)、手の運動イメージ(motor imagery)を課題としたfMRIを施行し、大脳運動ネットワークの活性化とその変化を、経時的に追跡した。同時に拡散テンソル・イメージング法による錐体路のトラクトグラフィーを行い、錐体路の損傷の程度を形態的に評価を行った。 手の感覚刺激(palm brushing)、手の他動運動(propriocceptive input)をタスクとするfMRIを、純粋運動型片麻痺(脳梗塞)の患者でそれぞれ3例ずつ施行した。また、比較のために、手運動(hand movement)のfMRIを3例で施行した。その結果、いずれの感覚刺激も、正常手の刺激では、対側の一次感覚運動野、補足運動野、同側の小脳などの運動ネットワークが賦活され、手運動による脳の賦活に匹敵する活動が観察された。また、患手の感覚刺激では、いずれも、正常手の活動範囲には及ばないものの、運動ネットワークの活動が誘発された。 以上のように、患手の感覚刺激は大脳の運動ネットワークを賦活するための有力な方法であり、麻痺手の機能回復のための可塑性の発現のために重要な外的刺激になると推察された。
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