これまでの日本語話者の小児例における知見(Uno et al. 2009、宇野ら2007など)をもとに、成人の発達性dyslexia例の評価に必要と考えられた要素的な認知機能検査(非語復唱10課題、単語逆唱5課題、ひらがな単語・ひらがな非語・カタカナ単語・カタカナ非語・文章の速読課題、Rapid automatized naming、複雑図形の模写と即時および遅延再生課題)を作成した。また、頻度や親密度、心像性、学年配当といった属性を考慮した漢字音読用の単語リストと、漢字書字、英単語音読と書取課題、英語非語の音読と書取課題を選定した。これらを首都圏近郊の公立高校、私立高校各1校にて、多数の知的障害、音声言語の発達障害および脳損傷の既往のない読み書きに関する健常高校生に実施した。この調査によって、得られたデータを元に、各課題の基準値を作成することが可能となった。この基準値は、収集済みあるいは今後収集予定の日本語話者の発達性dyslexia成人例のデータに照らし、その実態を検討する上で欠かせない資料となる。さらに、これまで本邦にはなかった発達性dyslexia評価のための重要な資料となる。 また、英国Royal Callege of Art (RCA)にて、同校のDyslexiaのコーディネーターであるQona Rankin 氏らに会い、RCAにおける発達性dyslexiaへの支援の実態について聞き取り調査を実施した。さらに、同校留学中の日本語話者の発達性dyslexia成人1例に対して検査を実施した。
|