活動量の低下に伴う骨格筋の萎縮は廃用性萎縮と呼ばれている.萎縮に伴う骨格筋の構造変化に関しては,筋線維辺縁の波状変化や筋原線維の破綻,Z線の変化などが報告されている.我々は,廃用性萎縮筋において筋線維の波状変化が早期より出現することを報告し,廃用性萎縮のマーカーとなることを示した. 本研究では,萎縮に伴って出現する筋線維の波状変化に着目し,走査型電子顕微鏡による観察と免疫組織化学染色法を用いた解析を実施した.昨年までの解析では,廃用性萎縮筋の辺縁部において波状構造を呈する部位が観察され,この部位では基底膜が筋の細胞質に入り込み溝のような構造を呈していたことが分かった.しかし,従来報告されているような筋原線維の破綻はみとめられなかった. 昨年に引き続き,今年度は萎縮筋で生じた波状の構造変化の発生原因について検討した.筋膜の分解に関係するマトリックスメタロプロテアーゼ2の発現や主たる基底膜成分のコラーゲンIVの発現について,抗体やサンプルの固定方法を変えながら検討したが,廃用性萎縮筋における特徴を見出すことができなかった.また,廃用性萎縮筋の間質の状態も検討した.廃用性萎縮を示す骨格筋の間質では,コントロール群に比較して単核細胞の出現数が増加していた.この単核細胞について,マクロファージや好中球,筋芽細胞,繊維芽細胞の可能性を考え免疫染色を実施した.その結果,その一部は好中球であることがわかったが,マクロファージや繊維芽細胞,筋芽細胞に対する陽性所見は認められなかった. これらのことから,短期間に生じた廃用性の変化は,筋萎縮の程度は強いものの筋膜や筋間質における変化は少ないことが示唆された.
|