研究課題
パーキンソン病(PD)のリハビリテーションの効果を明らかにするために、PDの主要症候である無動について調査を開始した。無動を対象症候とするにあたって熟慮を重ね時間を要したが、無動はPDのほぼすべての運動障害に関わり進行期には殆どの治療が無効となるためリハビリテーションの介入が重要な役割を果たす可能性が高く、他の主要症候(振戦や固縮)は薬物治療や外科的治療が進行期においてもなお有効であることから、無動はすべての病期に関わる可能性がある非運動症状(自発性低下やうつ状態など)との関連性を調査する上でより適していると考えた。無動に関わる運動障害の一つにリズムの障害があり、無動に関連した他の症候の中からさらに具体的に嚥下障害を選択した。嚥下障害は肺炎などの合併症の要因となりPDの予後に大きな影響を及ぼすとともに病初期から潜在性に存在することが指摘されている。嚥下運動にはドパミン性神経伝達を介したコリン作動性神経伝達が関与し、複数の大脳皮質領域がその運動機能に関わることが示されている。このことは、当初の計画にあるMRスペクトロスコピー(MRS)によるコリン作動性神経活動の評価を行う上でより適切と考えられる。また、嚥下機能の評価には嚥下造影(VF)や筋電図など既に客観的な検査方法が確立されている。これらより、当初の目標であるPDの運動症状に対する非運動症状の関与における検討の一つとして、重症度の異なるPDに対しVFを施行し、特に嚥下運動関連器官の一つであるである舌骨動態を調査した。その結果、正常対照に比しPDでは舌骨運動速度の遅延が認められ、無動の高度な進行例でより顕著であることが明らかとなった。これより嚥下障害の進行には無動が密接に関与していることが推定される。さらに、MRS、L-dopa血中動態の追加検討を行い非運動症状の関与を検討する。これらは第48回日本リハビリテーション医学会学術集会(2011年6月)に発表する。
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Molecular Syndromology
巻: 1 ページ: 91-94