研究概要 |
本研究では、複数のモダリティを駆使しtDCS効果発現の分子メカニズムを明らかにしtDCS適応条件の設定や効果持続性向上、さらにテーラーメイド医療の実現にも貢献できる。本年度は、1)3TMRIを用いてf-MRIによる運動課題motor mapを作成・参照、従来のf-NIRSで汎用されている国際脳波基準10-20法による簡易な運動中枢手指再現領域とされるC3、C4と比較した。その結果、C3領域を中心に設置された電極プローブで全例カバーされることを確認した。2)ドーパミンのt-DCS効果への修飾作用の可能性について薬理学的検討をした。NIRSによるoxy-Hb 濃度変化を指標にドーパミンD2受容体拮抗薬(スルピリド)を服用前後でのtDCS(transcranial direct current stimulation; 仕様としてanodal mode, 刺激強度1mA, 刺激時間10 min)効果への影響の有無を10名の健常者(age:23-49; 男:女=7:3)で検討した。t-DCS後では同じ運動課題時のoxy-Hb濃度増加度合がt-DCS前に比べ増大していた。一方、スルピリド100mg各用量でのtDCS効果への影響を検討した結果、服用前と比べt-DCS after -effectとしてのoxy-Hb濃度増加は干渉された。その結果は、t-DCSの効果発現に少なくともドーパミン、特にD2受容体の関与を示唆し、今後効果の増強や持続性向上を考える上で重要な知見を得ることができた。3)tDCS効果の個人差と生体内ドーパミン受容体密度との関係の検討:上記被験者を対象に、[11C]FLB457を用いたPET計測を行い、効果の個人差とD2受容体との関係性を検討。3例で検討した結果、残念ながら優位な相関は認められなかった。原因として、主にNIRS計測の再現性の問題が大きかった。
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