我々は坐骨神経を切断した筋萎縮モデルラットを用い、筋に周期的な機械刺激を加えると、萎縮が軽減されることを明らかにしてきた。しかし、どのくらいの機械刺激量を加えると筋萎縮を軽減できるのか、また、どのような刺激方法が最適なのかは未だ明らかでない。 そこで本研究では、ラットの骨格筋に定量的な機械刺激を加えることができる装置を作製し、どのような機械刺激(刺激量、周波数、波形)が筋萎縮を軽減するのに最適なのかを、組織化学的手法を用いた形態学的視点と生化学的手法を用いたメカニズム的視点から明らかにすることを目指す。 本年度は、機械刺激が筋萎縮を軽減すること定量的に明らかにするためのラットの足関節背屈装置を作製し、その作動確認を行った。 具体的には、ラットの足関節を一定のトルクで背屈させることにより、ヒラメ筋を一定量伸張さる系を確立した。ステッピングモータにより他動的にラットの足関節を底背屈させ、さらに、トルクセンサによりラットの足関節に加わるトルクを感知し、常に一定のトルクを加えることのできるような機構とした。特に、コントローラユニット(制御部)の開発により、トルク制御を行い、どのくらいの範囲の周波数制御が可能かを検証しながらの開発を行った。その結果、本装置を用いることで常に足関節に対するトルクを一定量に保ちながら、周波数の下限が0.5Hz(ラットの足関節を1秒間背屈位、1秒間底屈位に保持する繰り返し運動)の運動を15分間続けること、上限が持続的に伸張位に保持する運動を15分間続けることを行うことができることを確認した。また、足関節に対する一定量のトルクは、4mNm~8mNmの範囲で常に与えることができ、現実的に実験に対応することができることを確認した。
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