研究概要 |
実験は、閉経後の高齢者女性を想定したモデルマウスである卵巣摘出した群と野生型の2群に分類し、それぞれの群に対して、水平回転式の振盪刺激を行った群と行わない、計4群に区分した(卵摘/刺激:+/+,+/-,-/+,-/-)。回転軸がずれる水平盤を一定の速さで回転させる振盪刺激を毎日30分週6回を10週間継続した後に大腰筋を採取し、タンパク質発現解析と組織学的解析による筋線維の短径と線維数の計測を行なった。 筋線維の形態計測解析から刺激群の大腰筋に肥大が確認された。また、筋肥大を促進するタンパク質であるGDF-8と筋の発生・分化に関与するMyf-5, Myf-6のタンパク質は、刺激によりその発現が増加傾向を示した。大腰筋の肥大はその筋の起始部が腰椎にあり、この刺激により腱を介して直接、骨に刺激を与えたり、その周辺の結合組織、膜、血管を介した間接的な腰椎への刺激となっているのではないかと考えた。これは、腰椎の骨密度低下を防止し高齢者の圧迫骨折を予防できる運動になる可能性が示唆された。そこでテトラサイクリンとカルセインを用いて骨ラベルを行い、骨形態計測を実施しその影響を解析した。現在、その解析途中にあるが劇的な骨密度低下防止とはいかないものの骨密度低下スピードを緩和するような傾向が得られている。これは以前、研究代表者が発表した成果の1つに大腿骨の骨密度低下の緩和と同様な結果が得られていることが推察される。水平板回転装置による刺激運動は大腿および下腿の筋群に作用しその筋を肥大させ下半身の安定化に役立つと考えられる。今後はこの刺激強度を上げることは、将来人へと応用する際に危険を伴うと考えられるため、筋肥大を促進させるアミノ酸であるバリン、ロイシン、イソロイシン(BCAA)を投与し、より筋からの刺激を骨に伝える方法を改善し、発展させマウスによる解析を継続する予定である。
|