研究概要 |
加齢による心血管機能の変化を超音波診断装置で非侵襲的に測定する方法の妥当性の評価が,本年度の研究実施計画であった.動脈直径(D)の相対的な時間変化率(dD/dt)/Dは,加齢とともに血管が硬くなり減少する.血流速度(U)の時間変化率(加速度)dU/dtも加齢により,心拍出の様式が変わり減少する.したがって,この両者の積であるウェーヴ・インテンシティー(WD)の最大値(WD_1)は加齢により減少する.そこで,α=470/WD_1を新たな心血管年齢指数と定義し,まず正常例において,αと年齢の関係を検討した.ヒトを対象に超音波診断装置を使用し測定を行った.30名の心疾患の無い健康な男女(男性20名,女性10名,平均年齢±標準偏差:35.9±16.6歳;年齢範囲:21-70歳)を対象にαを算出した.αと年齢とは有意な相関(r^2=0.60,p<0.0001,y=1.087x-1.441)が見られた.今後さらに症例数を増やして検証を続ける. また,心臓リハビリ療法による虚血-再灌流障害に対する心筋保護作用を明らかにする目的で,類似の作用を有する水溶性カルパイン阻害剤であるSNJ-1945投与がラット生体位心において心虚血-再灌流時に心筋保護作用を示すかどうか,さらにSNJ-1945のβ_1作用が心筋保護作用にどのような影響を及ぼすかについて,心臓の左心室圧-容積ループと一心拍当たりの総機械エネルギーを表すPVA(systolic pressure-Volume Area)を解析することにより検証した.その結果,SNJ-1945前投与は心虚血再灌流障害を減弱させる心筋保護作用を示すこと,SNJ-1945のβ_1作用は心筋保護作用に影響を及ぼさないことが明らかになった.今後はトレッドミルによる運動負荷の心虚血再灌流障害に対する効果を検討する予定である.
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