研究概要 |
1.動物実験では,運動療法が,マイルド虚血―再還流障害 (mI-R) 後の心機能に対してどのような影響を及ぼすかを収縮期末圧―容積関係(ESPVR)や圧―容積面積 (PVA) を求めて評価することが目的であった.運動負荷は%70maxVO2の強度で,負荷時間を1日目10分間から10分間/日ずつ延長し,5日目には50分間のトレッドミル走行を行い,2日休み,その後3日間同様の強度で60分間走行を行った.結果,mI-R 後のESPVR,PVAは,mI-R のみの (mI-R) 群では有意な低下を示し,運動を行った(Run+mI-R) 群においては有意な低下は見られず,mI-R 群と比較して有意に大きく,タイムコントロールと差がなかったことから,心筋の保護効果を有することが示唆された.ウェスタンプロット法で高分子量の細胞骨格タンパクであるα-フォドリンの分解を見ると,mI-R群では,有意に分解が促進されていたが, Run+mI-R群では,有意な分解の促進は認められなかった. 膜電位依存性のL型Ca Channel (LTCC) や,筋小胞体Caポンプ(SERCA2a)のタンパク量もmI-R群では有意に減少するが, Run+mI-R群では, 有意な減少にまで至らなかった. 2.臨床研究ではヒトを対象に,上記と同様の負荷強度での運動効果を検証した.健康な成人30名を対象として心血管年齢係数α値と,心収縮性指標WI (W1)を用いて評価した.運動負荷%70maxVO2で1日目10分間, 2日目20分間, 3日目30分間とし, 2日間休み,その後1日30分間の運動を2週間を行い,運動負荷前後で比較した.2週間の運動負荷でWI (W1) は有意に低下し,安静時において心臓は収縮性を減少させていた.また,安静時心拍数の有意な減少,1回拍出量の増加傾向を示した.α値には変化が無かった.
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