研究課題
脳機能障害のリハビリテーション過程は、感覚や運動機能の再学習と密接に関連しており、リハビリテーション技術の高度化のためには脳の可塑性や学習過程の解明が欠かせない。我々は、脳梗塞後のリハビリテーション過程においても、鳥の歌学習と同様に感覚学習期から運動学習期へと段階を経た学習過程が存在し、それに応じた適切な機能回復訓練法あるいは訓練時期が存在するのではないかと考えている。平成22年度は、健常ラットに選択反応時間タスクの逆転課題を学習させ、感覚運動連合学習が感覚学習期と運動学習期からなるかどうか検討した。一般に利き手は感覚機能及び運動機能がもう一方の前肢に比べて優っている。したがって、利き手の方がタスクの獲得にかかる時間は短くなると考えられる。もしも、学習過程が感覚系から運動系へと移行していくならば、タスクの学習初期にみられる左右前肢の感覚機能の違いによる成績の差は、運動機能の違いによる成績の差よりも先に消失するはずである。そこで、健常ラットに左右前肢による選択反応時間タスクの逆転学習を行わせ、利き手の違いに着目して学習曲線を統計解析した。その結果、逆転学習の直後に見られた左右前肢の感覚機能の違いによる成績の有意差は消失し、その後、左右前肢の運動機能の違いによる有意差が生じていた。左右前肢の感覚機能の違いが運動機能の違いよりも先に消失していたことから、感覚系に関連した学習が運動系に関連した学習に先行しているのではないかとの知見が得られた。本研究成果は、一般の感覚運動連合学習において感覚系に関連した学習の上に運動系に関連した学習が成り立っていることを示唆するものである。リハビリテーション過程でも同様の現象が見られるとするならば、訓練の効率を改善するための重要な知見となるのではないかと考えている。
すべて 2010
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Proceedings of the Joint 5th International Conference on Soft Computing and Intelligent Systems and 11th International Symposium on Advanced Intelligent Systems
ページ: 434-439