平成22年度は、光ガイドに用いるファイバが満たすべき仕様を実際の実験により決定し、これに基づいてファイバの試作を行った。 まず、人体の薄い部分(指先、頬、耳朶等)を用い、白色光を光源として、これらの生体組織の透過光スペクトルを計測した。その結果、近赤外光領域の特定の波長が最も透過し易く、今回の目的では光源として最適と考えられた。また、豚肉組織(筋肉、脂肪)を積層し作成した腹壁モデルを用いた検討では、組織の厚さに対し透過光量は指数関数的に減衰した。得られた組織厚-透過光関係から、ファイバ光量の目標を設定した。 以上の予備検討の結果をふまえ、ファイバを試作した。ファイバ射出端は、シュミレーションにより形状の設計を行なった上で微細加工をおこない、ポリカーボネートで被覆した。 このようにして試作したファイバの射出端出力の空間分布を測定した。光源としては近赤外光領域の発光ダイオード(LED)や低出力の半導体レーザーを用いた。測定の結果、ファイバ軸周囲に適度な光の分散が実現できた。次年度は、ファイバ端の形状をさらに最適化したい。 一方、ファイバ射出端の出力はまだ目標に達していない。LEDでは高出力のものが選択できるが、ファイバのN/Aの制約があり、現状ではエネルギーのロスが多い。光源がレーザーで有る場合、ファイバへ光を導入し易いが、将来ベッドサイドでの利用を目標としているので、安全面からむやみに出力を上げることは出来ない。次年度では、さらに光源-ファイバカップリング機構の効率化の検討を行う。
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