研究概要 |
本年度の研究実績の概要を以下に述べる. ①床振動が振動源から伝搬するまでの時間差(時間遅れ)から,距離(振動源)を推定する方法に関して検討した.すなわち,足底が床を打ったときの振動が,その振動源を中心に同心円的に伝搬することを利用することで,時間遅れから信号源を推定可能であった.実験住宅における振動源位置の推定精度に関しては,総合的に 20 cm 程度の誤差であれば衝撃発生位置が推定できることが示された.この距離は人体幅半分程度であり,居住環境内における動線推定やアプリケーション開発には十分と考えられた. ②床振動特性と足底部動作(歩行特徴)の関連性に関して検証した.通常歩行時の一連の足底動作としては,1) 踵接地 2)爪先接地 3) 踵離床 4)爪先離床が順次観察される.これらの各運動様式と床振動の関連性を実験を通じて調べた.床上面に加速度センサを配置するとともに,高速度ビデオカメラ(100 frame/sec)にて歩行動作を同期記録した.これにより,上記の4運動様式と床振動の関係を把握する事が可能であった.また,Transient な歩行特性として,歩行開始・停止などに関しても床振動と歩行動作との関係を調べた. ③身体動揺量を床振動情報から推定した.被験者腰部に加速度計を固定し,リビングルーム空間内を自由歩行した際の腰部動作(加速度)を記録するとともに,床振動を同期記録した.実験の際の歩行条件としては,素足の状態で, 1)自然速度・自然歩幅,2)速めの歩行・自然歩幅,3)緩速歩行・自然歩幅と設定した.各試行において歩行速度はメトロノームで管理した.歩行計測時間はいずれも 1 分間とした.サンプリングレートは 1 kHz であった.その結果,歩行速度増加に連れて,両者の加速度信号は増加傾向にあることがわかり,本手法を用いて,歩行エネルギを推定する可能性が示唆された.
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