脳卒中で片麻痺となった患者が退院・在宅生活を開始すれば、入院中の手厚い看護・介護体制から自立し、在宅での生活に定着しなければならない。在宅患者がどのような日常生活状態を過ごし在宅定着するかは未解明であるが、早期の退院が促されるようになり、在宅での定着状態の把握は重要になってきた。本研究では生活状態を反映するテレビ利用状態をモニタリングし、現在は未確立である退院時から在宅へと生活が変化する退院移行期における在宅定着状態の評価手法の確立を3年間で目指した。 まずテレビの利用状態(ON/OFF)を自動記録するモニタリングシステムを開発した。そして本研究に参加した被験者(男性、71歳、高血圧性脳内出血により右片麻痺、要介護2)宅に、テレビ利用状態モニタリングシステムを設置した。退院時からテレビ利用状態のモニタリングを開始し、約1年間継続させた。さらに、被験者の通所リハビリテーション時に認知や身体能力などの評価を行い、テレビ利用状態と共に、これらの変化を記録した。この被験者では退院直後にはテレビを利用する時間が不規則であったが、時間の経過と共に規則的なテレビ利用の習慣が確認された。テレビ利用の総時間数は約3ヶ月間までは徐々に増加した。通所リハビリテーション時に評価した各種項目では、退院前に比べて退院後の在宅へ移行後の約3ヶ月間までは、生活空間の広がり、認知症テストや身体能力は向上傾向であった。しかし機能的自立度は退院直後に一時的に低下したが、半年程度で退院前までに回復した。テレビ利用の総時間および認知や身体能力は、これ以降大きな変動が認められず、回復維持期に移行したことが伺えた。 このようにテレビ利用状態からは、在宅での定着状態を推定できるだけでなく、認知症や身体能力の状態も反映する可能性が示された。今後、症例を増やし上記の可能性を統計的に示す必要がある。
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