本研究の目的は重度な障害等により運動機能が著しく低下した人を対象としたコミュニケーション支援手段である視線入力と視覚刺激を用いた事象関連脳電位(ERP:Event Related Potential)を応用したBCI(Brain Computer Interface)との連携に関わる基礎検討である。初年度に当たる22年度は視線入力インタフェースとERP成分であるP300に着目したBCIにおいて次の項目について実施し、進捗及び成果は以下のとおりである。 1. 視線入力インタフェースの事例構築と諸条件の検討 視線文字入力インタフェース事例として画面表示した50音から所望する文字を見つめている視線を推定して文字入力するシステムの構築を進め、短文入力時で1文字当6秒での入力を確認した。これはUSBカメラにより撮影した顏画像のみを入力とする簡素な構成である。この事例においては、視線に関係する利用者、ディスプレイ、カメラの配置を考慮し、キャリブレーションに必要な情報の検討を進めた。 2. ERP成分P300を応用したBCIの構築と脳波波形判別手法の検討 まず、視覚刺激に基づくERP成分P300を応用したBCIの構築準備としてオドボール課題から実用的な多肢選択課題に至る評価システムを構築した。この評価システムには視線の同時計測機能の付加を進めている。また、従来手掛けていた聴覚刺激に基づくBCIシステムから得られた脳波波形に対し、利用者の意思を汲み取るインタフェースとして必要な脳波波形の統計的な処理や選択肢の判別方法について検討を行った。 次年度以降は、両手法の融合化の課題に向けた諸条件の検討を進める。
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