本研究は運動機能が著しく低下した障害者のコミュニケーションにおけるインタフェースとして、従来提案されている視覚刺激に基づく事象関連脳電位を応用したブレイン-コンピュータインタフェース(BCI)と視線を用いる入力手段の融合に関する基礎的検討である。24年度は、両者の融合システムについて構築、評価を実施し、進捗及び成果は以下のとおりである。 融合システムの構築においては、視覚刺激により誘発される事象関連脳電位(ERP)のP300成分を応用したBCIに対して利用時の顔画像を記録、解析する機能を付加したシステムの構築を進めた。視線情報を応用できる刺激方法としてディスプレイ上にグループ化した刺激を配置する手法を検討した。BCI課題遂行中の顔画像をオフライン処理で解析し、システム上の諸問題を明確にした。 次に個別システムの要素技術の改善として、視線入力システムの要素技術としてERPに対して影響を与える瞬目について顔画像処理においても抽出し、視線入力システムの機能の一部となりうる随意性瞬目と不随意性瞬目の判別手法を構築した。BCIシステムにおいては、課題遂行中の利用者へのフィードバック機能について検討した。 さらに、課題の明確化として、構築した融合システムではオンライン処理には至らず、機能的、システム的な改善点をあげた。本検討で、視覚刺激BCIにおいて不十分な注視状況下でのP300判別の可能性が見出され、目的とする刺激と視野の関係性を明らかにし、融合システム上での対応手法を考案することが課題となった。
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