研究概要 |
今年度の研究においては,前年度に構築した,車椅子シミュレータにウィリー動作を可能とする新たな機構を追加し,段差乗り越えの訓練効果について検証した.そして,ハンドリムと身体の動きに応じた適正なピッチ運動が実現できるかについて実際の車椅子との比較に基づく基礎的な実験とその検証を行った.次に,ウィリー動作を用いた段差乗り越え実験を行った.実験では被験者を無作為に二つのグループに分けた.片方のグループにはシミュレータを用いてウィリーの訓練をしてもらい,もう片方のグループではウィリーの訓練を全くしないでもらう.その後,実際の車椅子を用いてウィリー動作をしてもらい,その時の成功率を実験データとして取得した.その結果,ウィリー動作に対する車椅子シミュレータの訓練効果が確認された.本研究ではさらに,仮想空間の効果的な提示法の検討と訓練状況に関する情報を提示画面に付加することで訓練効果の向上を目指した.すなわち,車椅子のピッチ角に対応した情報を提示する角度メータと,ハンドリムに加えた力の情報を提示するハンドリムメータを作成し,被験者に提示する映像に付加した.実験では,車椅子のコンピュータグラフィックス映像に車椅子の角度メータを付加したいくつかの映像パターンを用い,訓練時間,試行回数,ウィリーの傾向,実際の車椅子でのウィリー成功率を比較した.その結果,横方向からの車椅子作業映像にハンドリムの操作力メータと車椅子の傾斜角度メータを付加したものが最も高い訓練効果が得られることが確認された.これにより,安全性と高い訓練効果をもつ車椅子シミュレータについての知見を得ることが出来た.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では,今年度は車椅子シミュレータにウィリー動作を可能とする新たな機構を追加し,段差乗り越えの訓練効果について検証することを目的としていたが,これについて十分な検証を行うことが出来た.それに加えて,仮想空間の効果的な提示法についても踏み込んで検討をすすめることができた.
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究において,車椅子シミュレータのユーザにどのような視覚情報を提示すれば,訓練効果が高まるかについての基礎的なデータが得られたが,来年度においては,さらに高い訓練効果を得るための情報提示方法について検討を進める.この情報提示方法については,視覚提示に加えて被験者の動作に応じた適切な動きを車椅子シミュレータで提示することを予定している.
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