研究概要 |
手話の言語的な知見を手話認識の枠組みに活用する試みとして、これまでに提案してきた手話の動作要素(サブユニット)を自動分類する枠組みを発展させ、手話の音韻体系を反映した高精度な手話動作モデリング手法を開発した。具体的な取組としては、手話では手の位置,運動,局所情報という性質の異なる要素の同時的な組合せから多様な動作を表すという手話の音韻構造に着目し,三種類の音韻と両手を異なる特徴とみなして個別のモデルとして学習・分類することで、共通要素の集約が効率化され、より汎用的なサブユニットを構成することを試みた。このような手法に基づいて、手話単語の認識実験を実施し、100単語の認識タスクにおいて従来手法からの性能改善を確認した。 一方で、手話認識で利用可能な手話の研究用データベースは入手できるものが限られており、タスクに応じた語彙や文章数データベース設計の方法論を確立することが重要である。当該年度では、3次元カメラを購入し、手話通訳士(1名)による500文章規模の手話データベースを構築した。サブユニットの生成に効果的な手話の音韻バランスを考慮したデータベースの設計方法として、手話の教本から基本的な手話表現と重要単語を収集し、先に述べた手話の音韻の出現頻度が一定のバランスを維持するような語を選択した。さらに得られたデータベースを用いて、これまでに提案してきた手話認識の枠組みにより、簡易的に評価実験を実施した。
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