研究概要 |
本研究の最終目標は,積雪寒冷地域に生活する高齢者の歩容に関する生理的多型性に着目し,摩擦係数の低い路面環境への適応能を下肢と上肢の協調運動から明らかにすることである.本年度は体幹のバランスを崩した際の歩容の評価と,体幹と下肢の可動領域を制限したペダリング運動における適応能の検討を行った.得られた研究成果は以下の2点である. 1健常成人において,通常の摩擦係数を有する路面環境下で歩行実験を行い,下肢筋群の筋電図と腰部の動揺を評価した.体幹のバランスを崩すために与えた外乱要因としての負荷は(a)4kgの錘を右手のみで保持,(b)4kgの錘を両手にそれぞれ保持,(c)8kgの錘をリュックサックを用いて保持,の3種類とした.コントロールとして無負荷での歩行を行い比較した.その結果,4kgの錘を右手のみで保持した場合と4kgの錘を両手にそれぞれ保持した条件での歩行は無負荷時の歩行や8kgの錘をリュックサックを用いて保持した場合の歩行と比べ有意に腰部の動揺が増加し,前頸骨筋と腓腹筋の筋電位が増加した.腰部の動揺が大きくなる歩行では歩幅が小さくなる傾向が認められた. 2体幹を固定した実験としてペダリング運動を行った。運動の適応能を検討する目的で下肢筋群の筋電図と加速度をサイクリストと非サイクリスとで比較した.ペダリングの運動負荷として,ケイデンスを一定とした条件下で80%MVCと90%MVCの2通りを課した,その結果,ペダリング中の左右方向の加速度はサイクリストの方が非サイクリストよりも有意に小さく,筋電図の%RMS値は90%MVC負荷時において前頸骨筋と腓腹筋でペダリング運動の習熟度により差が認められた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
1.本年度の研究費の交付に関して,年度初めに研究費が削減される可能性があるとの知らせが届いたり,実際の交付においては分割されるなど遅延し.計画通りに研究費を使用して研究活動を行うことが出来なかったため.2.東日本大震災により,既存の実験設備が損壊し,修復に時間と費用を要したため.
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