研究概要 |
要介護高齢者の場合,排尿状態を把握するのは容易ではないため,評価方法が確立されていない.そのため,評価に基づいた排尿障害の診断や治療および治療効果の判定が困難である。本研究において,今年度は要介護高齢者の排尿状態を正確に,より詳細に捉えるための排尿評価方法の確立を目標とした.排尿日誌記載法において,特に尿意について,尿意の有無や尿意切迫感の有無を把握するだけではなく,排尿や失禁に至る尿意の詳細な把握の可能性に着目した.対象は老人施設に入所している認知症と診断されていない要介護高齢者である.排尿日誌には,センサー・パッドを用いての即時的な尿失禁の把握,携帯型アラームを用いての対象者からのトイレへ向かう知らせ,失禁毎のパッドもしくはおむつの乾湿重量差測定,尿計量器を用いての排尿量測定,5段階にグレード化した尿意スケールの提示による排尿(失禁)毎の尿意の程度の聴取確認,デジタルスケールを用いた水分提供毎の摂取量測定と摂取確認にて,時刻(排尿および失禁),尿量,尿意の程度と水分摂取量を記載した.さらに1日3回超音波残尿測定器を用いて残尿量測定を実施した.排尿日誌の作成は各対象者に2日間ずつ実施した.機器使用上および測定上の問題は出現せず,また尿意に関して排尿および失禁時に尿意スケール上の該当する尿意の程度を指し示すことができない対象者は存在しなかった.この記載法により,排尿状態が正確かつ詳細に把握できるため,介入時の効果判定においても有用であると考えられた.
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