本研究では,一側と両側同時に触圧覚二点刺激を与えた時の体性感覚誘発脳磁界(SEF)を計測解析し,二点識別の処理過程について検討することを目的とした. 対象は,健常男性10名とした.SEF波形の計測には306ch脳磁界計測装置を用いた.二点刺激は非磁性体触圧覚刺激装置(ピン径1.3mm,突出量0.7mm)を利用した.課題は,全被験者が二点と判別できるピン間隔7.2mmの二点刺激を右示指と両側示指に対して行う場合(一定距離間隔刺激条件)と,ピン間隔2.4,4.8,7.2mmの3種類の二点刺激をランダムに与え二点識別させる課題を右示指と両側示指に対して行う場合(二点識別条件)を設定した.SEFはいずれも300回加算平均した.次いで,それぞれの条件において潜時,振幅値を計測し,左右両側同時刺激時の二点識別条件の電流発生源(ECD)を同定した. その結果,被験者10名のうち7名で,2条件において一側,両側刺激とも60,150,300ms後に明確な波形(第一,第二,第三成分)のピークが左半球に認められた.平均ピーク潜時は,両条件ともに一側,両側同時刺激間で差は無かった.振幅は,両条件間で比較すると一側刺激においては両条件で差は無かったが,両側同時刺激においては一定距離間隔刺激条件での第2成分,第3成分それぞれは,36.0,35.4(fT/cm),二点識別条件は46.9,35.4であり,両側同時刺激における二点識別条件で大きかった.第二,第三成分のECDは,それぞれ一次感覚野(3b野)と3b野の後方に同定された. さらに左右同時に二点識別課題を遂行し,2点識別が可能であった時に母指を運動させる課題を設定し,その時のSEFと運動関連脳磁界(MRCF)を計測して二点識別時の第三成分からMRCFの運動磁界(MF)までの反応を検出しようと試みたが,顕著な波形が見られずECDは同定されなかった.
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