研究概要 |
平成22年度の研究目標は、律動運動中の体幹筋群の活動はCPGによる制御を受けているのかについて明らかにすることであった。神経学的疾患のない健康な成人男性7名を対象として、独立した固定式自転車エルゴメーター(クランク長15cm)を用いてペダリング運動を遂行させた。ペダリング運動の回転速度は60rpmであった。被験者がペダリング運動を遂行中に左足首外果レベルで腓腹神経を電気刺激することにより両側の腹筋下部(ABL)と腰部起立筋部(ES)より筋電図活動を導出した。電気刺激を与える位置は,ペダルが1-2周する間に、下肢のクランク位置が時計盤の12,3,6,9時に相当する位置のいずれか1つにあるときとした。 運動課題遂行時における皮膚反射は,潜時80-120msに顕著に表れた.運動課題として,ペダリング課題と静的な筋収縮課題を比較すると,静的な筋収縮課題に比してペダリング課題中の方が反射振幅が有意に大きかった(p<0.05).また,電気刺激をクランク位置12,3,6,9時の各位相で与え、皮膚反射の運動位相依存性について検討したが、ESおよびABLともに有意差はみられなかった。静的な筋収縮課題中及びペダリング課題中における皮膚反射の振幅と背景EMG量の間には、同側ABLと対側ABLにおいて、有意な相関関係が認められた。 これらの結果は、体幹筋群を支配する運動ニューロンも下肢のパターン発信に関わる神経機構の影響下にあることを示唆する。さらに、下肢の律動運動は下肢皮膚神経由来の体幹筋群皮膚反射のオフセットを上昇させていることを示唆する。
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