研究概要 |
体幹筋群の皮膚反射がCPGによる制御を受けているか否かを検討するため,健常成人7名を対象として下肢ペダリング運動遂行中に腓腹神経に電気刺激を与え,皮膚反射を誘発した.ペダリング課題と静的な筋収縮課題ともに、体幹筋群の皮膚反射は,潜時80-120msに顕著に表れた.皮膚反射の振幅は最大筋電図量で正規化し,その変化量をペダリング課題と静的な筋収縮課題を比較したところ,静的な筋収縮課題に比してペダリング課題中の方が反射振幅の方が有意に大きかった(左右脊柱起立筋(ES)および外腹斜筋(ABL),p<0.05).また,電気刺激をクランク位置12,3,6,9時の各位相で与え、皮膚反射の運動位相依存性について検討したが,有意な変化は観察できなかった.また、ペダリング速度や負荷の変化による皮膚反射の修飾も観察されなかった.一方,静的な筋収縮課題中及びペダリング課題中における皮膚反射の振幅と背景EMG量の相関分析を行ったところ,同側ABLと対側ABLにおいて有意な相関関係が認められた. 本研究では、背景筋電図量が同一でも静的筋収縮時に比してペダリング運動時に皮膚反射の振幅は前者で有意に増大することを確認した。この結果は,体幹筋群を支配する運動ニューロンも下肢のCPGの制御下にあることが示唆された。これまでに,多くの四肢筋群ではペダリング運動や歩行運動の位相に応じて皮膚反射の振幅が変化することが報告されている.しかし,本研究結果は、下肢の低域値皮膚感覚受容器の活動によって引き起こされる体幹筋群の皮膚反射は,運動位相依存性を示さず、歩行周期全体でオフセットを上昇させるように制御されていることを示唆する。
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