本研究の目的は、「追いかけ鬼」を一定期間実施することによる児童の体力・運動能力の向上効果を明らかにし、さらにその結果を参考にして、追いかけ鬼の指導モデルを開発することである。初年度(平成22年度)は、計画どおり、一般的な「ねことねずみ」の予備調査結果からルール等に教授学的改変を加えた「しっぽ取りねことねずみ」という教材を考案し、小学2年生(実験群32名、統制群30名)を対象に実施した。 実施方法は、体力・運動能力テスト(バランス・力動的エネルギー・スピード・敏捷性・巧緻性等の6項目)-教材の実施(6日間:1日につき1人が追う3回・逃げる3回のパフォーマンス、しっぽの装着、安全地帯までの距離10m)-上記と同様の体力・運動能力テスト-質問紙調査の順であった。その結果、以下の知見を得た。 1. 教材実施前後の体力・運動能力テスト結果について、2群間の差の平均値の統計処理を行ったところ、全体(男女)、男子、女子では全身反応時間テストに1%、25m走に5%、男子ではケンパー跳びに5%の水準で有意な差が認められた。 2. 両群の教材実施前後のテスト結果については、実験群において、全体、男子では25m走に1%、女子では5%の水準で、また全体、男子、女子では、ケンパー跳び、3・5・7シャトル走、反復横とび、全身反応時間テストに1%水準で有意な差が認められた。 3. これらの結果から、本教材は、6日間程度の実践でも力動的エネルギーとスピードに関わる因子及び敏捷性の向上に好ましい影響を及ぼしたといえる。また、質問紙調査の結果からもスリリングなゲームの楽しさや充実感が味わえたとの回答が多くみられたため、本教材は、学校園での鬼遊び教材として妥当であると結論できる。 なお、本結果は論文としてまとめ、体育科教育に関する学会に投稿する予定である。
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