研究概要 |
国家的な基準と学習者が実際に経験する体育カリキュラムの間には隔たりがあり,地方教育委員会や学校,教師集団,体育教師個人など,ローカルレベルでのカリキュラム・ポリティクスに着目する必要が認められる.例えば,新学習指導要領で示された「体つくり運動」の重視などの改訂の要点が実際にはどのように機能し,結果的に生徒に何をもたらしているのかという視点である H22年度では,体育カリキュラムの策定と実行に関するポリティクスについて,オーストラリア教育学会(AARE)への参加や先進的な研究者との面談などから調査を進めた.また,体育カリキュラムに影響を与えるポリティクスについての基本的要素とその枠組みを整理し,学会発表を行った.発表では,基本要素として「制度レベル(学習指導要領)」「ローカルレベル(地方教育委員会・学校)」「実施レベル(授業場面)」「経験レベル(学習者)」の4つの階層に分け,実際の体育カリキュラムが学習指導要領そのままにトップダウン的に実施され経験されるのではなく,社会動向や教育行政,指導者の意識など各階層において様々な影響を受け変容していることを提示した.事例として,スポーツ・ゲームの指導では競争・協同への考え方が授業づくりに反映されることや体力づくりへの重点化とは裏腹に若い女性の「やせ」が進行していることを示した また,学校の体育カリキュラムの策定に際して機能する地方教育委員会や学校などのローカル・ポリティクスの実際について,いくつかのフィールドを選定し,資料収集とともに,2年次以降の調査計画を策定した.収集資料から,新学習指導要領における武道・ダンスの必修化への準備や教員の意識変革が遅延していることが推測できた
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