本年度の研究は、歩行運動におけるperformance発揮の違いによって、学習者(小学生)の主観的な情報の認知がどのような客観的な技術情報から得られているものなのかについて実験的に明らかにすることを目的とするものである。すなわち、小学2年生・小学4年生・小学6年生のそれぞれ13名の計39名を対象に、歩行運動(往復203mの直線コース)を題材に、6つの努力課題(「非常に速く」から「ふつうに」を経て、「もっとゆっくり」まで)でのperformance発揮の違いにより、主観的な認知的内容と客観的な技術的要因との関係を重回帰分析により明らかにした。 まず、各種の努力課題における歩行の平均速度と変動係数を算出した結果、いずれの学年も努力課題が軽度になるにつれて平均速度は逓減し、それらの速度レベルは6年>4年>2年の順であった。しかしながら、各種の努力課題における変動係数からは、学年に関係なく、「ゆっくり」と「もっとゆっくり」の低速課題で変動係数が顕著に大きくなる結果が認められた。これより、「非常に速く」から「ふつうに」の4つの努力課題下の試技を分析対象とした。重回帰分析を施した結果、2年生では認知的内容に関係なく、技術的要因が固定化している結果であった。これが、4年生になると「認知的内容-技術的要因」との対応関係がまったくみられなくなる結果となった。しかしながら、6年生では、高速歩行時における認知的内容項目(5項目)において技術的要因との対応が正確になる結果が認められた。これらのことから、2年生は乳幼児からの歩行がステレオタイプ化しているものと考えられ、その後高速歩行に対する認知が4年生以降から正確になってくるものと考えられた。
|