本研究は人間が持っているポジティブな感情や特性に焦点を当て生活の質の向上に寄与しようとするポジティブ心理学の視点(Seligman、2002)を取り入れ、心とからだの統合を目的とする「リズム体操」における動きの習熟とポジティブ感情との関連について明らかにしようとするものである。 1年目の本年度は、身体活動・運動に伴うポジティブ感情尺度として、快感情、リラックス感、満足感、不安感の3因子、12項目からなる改訂版尺度(MCL-2)を作成し、論文として執筆した(健康科学、33:22-26、2011)。また、ポジティブ心理学に基づくポジティブ感情に関して、喜び(joy)、興味(interest)、誇り(pride)、愛(love)など(Fredrickson、1998)、長期的な活動に対応するポジティブ感情の項目について文献研究を行った。また、よい動きのポジティブ感情に及ぼすメカニズムを明らかにするため、従来運動心理学の研究領域で仮説的に指摘されていた、生物学的仮説(温熱、エンドルフィン、モノアミン、反動処理など)と心理学的仮説(熟達、気晴らし、期待恩恵など)について文献レビューを行った。これらの仮説とリズム体操の運動特性との関係を検討した結果、リズム体操において動きが本質的諸徴表(マイネル、1981)に適合すれば、行為する主体には快感情が生起し、観ている者には感性的な好印象が引き起こされることが示され、リズミカルで全身的な運動のポジティブ感情への有効性および長期的な活動による動きの質的向上とポジティブ感情との関連性が示唆された。
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