研究概要 |
公立保育園(IE保育園5回,Y保育園3回),私立保育園(KN保育園:10回,NN保育園:9回),公設民営保育所(SK保育所:10回,M保育所:10回)の設置形態の違う保育施設6箇所を対象に,合計47回のフィールドワークを実施した。延べ,195名の就学前児童(5歳児)のボールゲームの教授-学習活動を中心に,約1年間に渡って保育園における身体運動文化に関わる教育(=保育)実践を継続的に観察した(実施期間:2010年4月20日~2011年3月8日)。その結果、身体運動文化(典型的運動あそび)を題材とした、教授-学習活動に関わる知見を得ることができた。 まず第1に,子どもアクティビティ尺度(2005年鈴木ら)を援用し、担当保育士による評価という間接的な視点からではあるが、ボールゲームの習熟度と社会性の発達度合いとがリンクする可能性が示唆された。調査項目や手続き等方法論上の課題も存在するため、両者を直線的な因果関係で捉えることは危険ではあるが今後も慎重に検討を進めたい。第2に、ボール遊び(的あてゲーム)を通して、予測判断能力の形成が可能であることが示唆されたものの、厳密な意味での投動作(オーバーハンドスロー)の習熟においては活動の前後の調査で顕著な効果が確認できなかった。第3に、保育園における活動としての運動遊び(=子どもにとって意味のある身体運動文化)で培う能力は、概ね、(1)姿勢制御の能力(リズム、水遊び)、(2)予測・判断の能力(鬼ごっこ、ボール遊び)、(3)スピードやリズムをコントロールする能力(散歩・かけっこ)の三つに収斂されるのではというカリキュラム構成上の仮説が示唆された。
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